Biz-Dev探検記(たまに息抜き)

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【BCx行政】西粟倉村のICOについて

岡山県西粟倉村が独自のトークンを用いてICOを実施するとリリースしています。これまでの地域通貨や地方債と異なり、「グローバルなマーケティング」「使い道の設定柔軟性の高さ」などの特徴から、新しい地方自治体の資金調達方法になりえるのかもしれません。

ただ、投資家保護の観点/公共性の高さという観点からは、もう少し法整備でゴニョゴニョしそうな感覚…でも地方創生に前向きな自治体は確実に興味持っていると思われです。

 

<サマリ>
岡山県西粟倉村は6月に(一社)トークンエコノミー協会を設立、独自通貨NACを発行することをリリースしました。
・NAC保有者は、西粟倉村のローカルVBに投票できる権利を保持し、投票に応じてトークンが当該VBに投融資されるとのこと(ローカルVBと支援者のつながりを整備して、トークンエコノミーを作る計画)。

・まだICO実施は未定ですが日経が取材記事を出しました。新しい地域振興の形として、規制が整えばNEXTふるさと納税して注目を浴びそうです。ただ、乱立した場合の管理コストなどを考えると共通PF構築により経済圏/流通圏構築も私企業にとっては検討余地ありなのかなと。


<狙い>
地域通貨xICOxVB支援という要素で成り立つ資金調達で、自治体/サポーターの強い関係性構築し、資金流入/循環する経済圏構築を目指す (米国や韓国でも自治ICO実施事例はあり。)
・他にもGCF(ガバメントクラウドファンディング)も実施。「川の再生プロジェクト」が、7月4日(水)に目標金額100万円に到達。

<バックにいる企業群>
トークンエコノミー協会は下記企業群がサポートについているとのこと
 ①㈱chaintope;BC技術を活用し、様々な地域仮想通貨の開発を行う。地方創生ICOをサポートするプラットフォームを研究開発中。
 ②村式㈱;Bitcoin等仮想通貨を活用した国際間取引ツール事業、国内及び越境ECサイトのプロデュース・構築事業を展開。
 ③エーゼロ㈱;自治体と共同での地域活性化プロジェクトや地域での起業コンサルティング地域マーケティング等のサービスを実施。

<日経記事;自治体がICO、自力で資金調達-岡山・西粟倉村、脱「林業依存」へ初の試み>

岡山県西粟倉村は村内のベンチャー企業と組み、2021年度までに仮想通貨技術を使った「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」で資金調達する方針だ。
主要産業の林業だけに依存しない経済基盤を築き、地方創生につなげる。
資本の論理とは縁遠いような山あいの村がなぜ自治体初のICO試みるのか。現地で取材した。

西粟倉村では廃校になった小学校に複数のベンチャー企業が入居する
東京から電車を乗り継いで5時間弱。人口1500人弱の西粟倉は面積の95%が森林だ。
市町村合併からは距離を置き、主要産業の林業を活用した独自の地方創生策を打ち出してきた。

その中核を担うのが村に拠点を持つベンチャー企業、エーゼロだ。
トヨタ自動車日本IBMシンクタンク出身者など多彩な経歴の人材が集まり、地域ビジネスの支援や、ウナギの養殖などを手掛けてきた。
事業拡大とともに村への移住者も増え、昨年は25人の流入超だった。村民の70代女性は「最近は若い人が増えてにぎやかになった」と話す。

「仮想通貨でお金を集めませんか」。
エーゼロの牧大介代表取締役が村にICOを持ちかけたのは2017年9月。
地方創生の突破口になると期待した青木秀樹村長は同社などと共同で研究し、18年6月にICOの実施を決めた。

ICOで描く青写真はこうだ。まず、エーゼロを含む民間企業が一般社団法人「西粟倉トークンエコノミー協会」を設立する。
協会は「Nishi Awakura Coin(NAC)」と呼ぶトークンを発行し、投資家が仮想通貨イーサリアムで払い込む。

NACの購入者は、村に関わる複数の事業候補から期待できる案件に投票する。
投票権はNACの保有量などに応じて増減する。資金は選ばれた事業に配分する
。調達資金は村の会計とは切り離して管理する一方、お金を調達できる企業は村の組織で絞り込むなど監視機能も利かせる。
エーゼロの執行役員で弁護士資格を持つ山田邦明氏は「ICOを通じて自立した経済圏を育成できる」と語る。
自主規制ルールなどの制度が整ってからICOを実施する方針だ。

村がICOを決断した背景にあるのが財政への危機感だ。
村の18年度予算は26.9億円の歳入のうち、国からの地方交付税が12億円。村の税収は1.3億円にすぎない。
さらに地方創生に特化した交付金が20年度に終わると、年1億円程度の財源がなくなる。

村外から資金を集めるには、ふるさと納税もある。
ただ、ふるさと納税は取り組む事業をあらかじめ決めた上で資金を募り、返礼品のコストも重くなりがちだ。
「国からの交付金を穴埋めするほどの資金集めは難しい」(西粟倉村産業観光課の萩原勇一課長補佐)とICOに期待する。

ただ、ICOだとしても順調に資金が集まるかどうかは未知数だ。
NACを購入する投資家のメリットは、投資した事業の成長に伴うNACの値上がり益。
事業が軌道に乗らなければ値上がりも期待できない。

NACは村内での物品やサービス購入の決済手段としての機能も付与される見通し。
野村総合研究所の大崎貞和氏は「投資家の心をつかむ地方創生のストーリーや使い道を提供できるかどうかが成功の鍵を握る」と話す。

海外ではエストニアが国家単位でICOを検討している。
自治体では、住宅不足に悩む米カリフォルニア州バークレー市が、ICOによる資金で廉価な住宅を供給する方針だ。

西粟倉村のNACは地方創生の財源がままならない小さな自治体による問題提起でもある。
青木村長は「国内外からお金を集められるICOの仕組みは魅力的だ」と話す。
投資する事業の概要をまとめた「ホワイトペーパー」作成やNACを発行する協会のガバナンス、規制対応――。
ハードルが多いだけに、西粟倉村の取り組みは国内外の注目を集めそうだ。