Biz-Dev探検記(たまに息抜き)

主に情報通信/サービスPF界隈のお話を。たまに旅行とかアニメも。

【BCx事業戦略】楽天のBC活用

 楽天のBlockchain(BC)の活用状況について、先日行われたカンファレンスでの講演をもとにまとめ&考察をしました。
 楽天は現在エンタープライズ向けのBC-Platform(PF)を提供。特徴としてはBC技術の詳細が分からずとも機能を利用できることで、中小の事業者(顧客)を確り見て事業展開している印象を得ました。

<PFの構成要素>
 楽天BCPFの構成要素/詳細は下記の3つで、基本的に楽天に出店する中小事業者に対するサービス展開を行っているものとみられます。
 楽天は2016年にBC研究所(英)を開設して研究を進めてきましたが、「Why BC??」の議論は常にあり、必要性が理解されない状況は変わらないとのことです。ただ、目的の明確化(ユースケースの特定)を通じて開発も進み、実装も進んだとのこと。

(1) エンタープライズ向けBC-PF
 企業/法人を対象とするBC-PF環境(Hyperledger Fablicメイン)を提供。セキュリティの高さ/可用性/クラウドベースでの開発を行える環境を提供
(2) 仮想通貨サービス
 第三者の取引所が提供するサービスと繋ぐ、BC-PFを通じて簡単に仮想通貨売買/取引を行うことのできるサービスを提供
(3) キーカストディサービス
 暗号化キーのセキュア管理を実現するための機能をBC-PFを通して提供。顧客はPFを介したサービス開発/構築により暗号化キーをセキュアに管理できる

<楽天PFへのBC適用>
楽天は16年に開設したBC-Labで既存サービスへの利活用を模索、4つのユースケースですでに実装を行ったとのこと。特に、楽天ポイントとBCを組み合わせた独自の仮想通貨「楽天コイン」の発行構想は非常に興味深いものでした。

(1) 楽天エナジートレーディングシステム(Rets)
 Retsは楽天エナジーが提供するPF上で稼働するCO2排出権のトレーディングシステム。BCでCO2排出権管理を行うことでシステム構築をしている。
(2) R-Star
 現在、社内でPoCを行っている評価のトークン化PJ。このサービスで例えば、同僚に仕事を助けてもらったときに、メッセージとコインを送ることが可能となる。
(3) ポイントサービスxブロックチェーン
 楽天の持つスーパーポイントをコアとする経済圏を構築。ポイントサービスとBC技術を組み合わせた新サービス/仕組みの開発が進行中。社内でいくつかのPoCを行っているとのこと。
(4) 楽天傘下「みんなのビットコイン
 昨年8月に買収した「みんなのビットコイン」を通じ、本年4月からサービス開始を予定。具体的には、ホットウォレットでのサービス提供を検討、サービス機能は楽天PFを利用した開発が進行中。
 単純な取引所サービスでなく、他サービス連携を進めて利用者にさらなる高い顧客体験を提供。

<考察>
 楽天の今回の発表に関しては「着実にBCの事業実装」を進め、「仮想通貨のサービス化」も進めていることが大きいと感じます。
 前者に関しては既に抱えている事業/技術知見(AIやデータ解析など)とBCを組み合わせることでサービスのUI/UX向上につなげようとしている点は顧客(クライアント/カスタマ双方)をしっかり見ている印象を受けました。
 後者の仮想通貨はポイント事業や金融事業を展開する中で見えた日本の特性をBC活用することでUI/UX改善につなげていこうという意志が見て取れます。おそらく、「新しいデジタルアセットとしての仮想通貨」という認識を広め、決済手段の一つとして活用を行って経済圏の強化につなげていくものとみられます。