【事業戦略】メルペイをベースとするメルカリ経済圏について
メルペイカンファレンスが開かれまして、メルカリ/メルぺイの狙う新しい経済が明らかになってきました。めちゃエキサイティングな事業モデル&達成手段で、聞いていてワクワクしました><
滑らかな信用経済。やはり現在のギグエコノミーとかって江戸時代にルーツがある気がしてならない。
【全体概要】
<会社概要>
- ミッションは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」で、「メルカリ」で培った技術力と膨大な顧客/情報基盤をもとに「メルペイ」を提供、将来的には決済手段の提供だけでなく新たな信用を生みだし、様々な金融サービスを提供していくことを目指しているとのこと。
- また、18/7には「メルペイ」を導入する事業者拡大のためにメルペイコネクトを設立済み。
<メルカリの設立背景(思想とか)>
- メルカリは、「スマホで個人-個人をつなぐことができたら素晴らしい世の中になる」という考えのもとで生まれ、メルペイは「信用を創造して滑らかな社会を創る」をミッションにメルカリを補完する存在の立ち位置。
- 加えて、「お金でなく信用で成り立つエコシステム形成」を目指しており、究極的にはお金の必要ない社会を実現させる見立てです。それにあたってのエコシステムの上り方として下記を想定しているものとみられます。
- スマホ普及で消費行動が変化する中で必要となくなったモノに対する流動性提供(中古品購入/購入前の売値リサーチのデフォルト化)
- 資金流動性へのイノベーションで、第1歩としてスマホ決済サービスのメルペイを始動
- 信用経済(Alipeyモデルかはわからないですが…)の基盤となり得るスコアリングの導入
【メルペイカンファレンス】
[サマリ]
- メルペイの社会実装のお披露目として、戦略含め諸々が発表されたカンファレンスで、主に「UI/UX向上に向けた取り組み」が話されました。具体的には「①パートナー連携を通じた決済手段の拡充」「②パートナー連携を通じた営業力獲得」「③Web上でのメルペイ利用シーン拡大」といったところとなります。
- 決済乱立の昨今、後発サービスながらも他社との幅広い提携で、長所を活かし短所を埋める“強かさ”が光っています。
[考察]
- 後発ゆえの見極めがうまいなと感じています。特にパートナー企業との提携を通じた相互補完による基盤構築や、低廉な決済手数料の永続化による加盟店魅力度の向上、その上での中立な基盤を目指している点、非常に面白いと思います。
- 恐らくOpen/中立な基盤とすることで様々な加盟店に参画してもらい、二次流通を前提とする経済圏を構築、メルカリ本体は「1次→2次」の取引手数料でマネタイズするスキームなのではなかろうかと思います。
[カンファレンスの発表内容]
<エコシステムの形成>
- メルペイはOpennessを旗頭に、複数のキャッシュレス決済手段の提供を通じたメルカリのUX高度化を行いつつ、公共事業者を巻き込んでマーケティングを含めたPFを形成するとみられます。
- 後述施策の通り、今回の施策は「メルカリで手にしたお金」の出口拡大がメインで、まさに「二次流通で発生したお金を一次流通に回す」コトの体現だと考えられます。
<導入メリット>
メルペイ導入メリットは大きく下記3つとされています
①売上金保有者を中心とするアクティブ顧客基盤アクセス
- メルペイのユニーク性はユーザー数だけでなく、ユーザーが”お金を持っている”ということで、決済サービス開始時の手間が最小で済むため、使われる決済手段になる
②年間約5,000億円の売上金を原資とした、新たな需要創出ポテンシャル
- メルカリ取引での売上金は普段の生活費とは異なる資金で、いわば臨時収入。
- ユーザーにとっては普段遣い+αの新たな消費需要を喚起する可能性があり、加盟店にとっても集客・収益拡大機会が期待できる
③「メルカリ」のデータ活用→より売れるようにデータを分析年間約5,000億円の売上金を原資とした、新たな需要創出ポテンシャル
- 顧客分析を通じ、決済利用ニーズが高い地域を特定(エリア/年代/売上規模など)して加盟店展開を推進。
- 効率的な加盟店拡大(メルペイ)/導入直後より使われる決済手段(加盟店)となることが期待できる
<拡大施策① 決済手段/使える場所の拡大…業務提携ラッシュ>
- 決済方式及び営業面での事業強化に向けた業務提携を立て続けに発表しました。
- 内容としては既存の加盟店取込(三井住友/JCB)と新規開拓(KDDI/地方公共団体)の両面で、物理的には劣位となる営業力補完を達成しうるものとみられます。
1:三井住友カード(iD)
- 事業提携によりNFC:iD決済の利便性/加盟店網と、メルカリのアクティブユーザーをつなげてシナジーを生むことが可能になり、安心安全/便利なキャッシュレス決済を実現する
- 「メルペイ」の非接触型決済対応開始にあたり事業提携…全国90万か所の「iD」加盟店で利用することが可能になる
- 事業提携によりコード決済普及で協働を進め、加えてJCBが進める「スマートコード(決済手段乱立に伴うセキュリティや利便性の混乱解消ツールとして)」の普及も推進。
- JCBが既に持っているクレジットカードの契約網を活用して今後開拓するSmartCode加盟店でメルペイが利用できるようになる
3:KDDI(営業補完)
- 加盟店獲得のための営業活動を協力して実施。KDDIは「auPAY」として4月に独自のコード決済をリリースするが、KDDIとメルペイが今後、中小の加盟店に営業する際はauPAYとメルペイの両サービスを提案。
- 物理的な営業力を補完する意味合いに加えて、au walletによる資金アクセスも。
4;地方公共団体(マイクロペイメントへの布石??)
- 上記とはベクトル異なるものの、データ分析/マーケティング施策を用いた地域貢献による社会課題の解決、ひいては商店街などの加盟店拡大にもつなげる方針
- 具体例;「福岡市→リサイクル」「仙台市→起業家支援」「千葉市→国家戦略特区」…商店街等も巻き込んだ、より小さいメッシュも網羅したPF形成を模索しているものと。
<拡大施策② 利用者拡大施策>
- 現在は多くの手段が乱立し、ユーザー/加盟店双方で負担になっているため、UX向上/利便性高いサービスに重点を置いて施策を推進するとのこと。
- Openness戦略;業種を超えた中立的な決済基盤構築をパートナー企業とともに目指す方針。ユーザーがどこでも使えて加盟店負担が少ない仕組みを目指す。
- メルペイあと払い;現在、メルカリで提供されている「メルカリ月イチ払い」での取引実績をもとにした、実店舗でも後払いが可能になる仕組み(2019年春に提供)
- ネット決済;Web決済版のメルペイで、Webで購入した商品をワンタップで出品できるようにする構想とのこと(競合の提供する決済手段に一味付けた格好)
- 個人間送金;当面は決済に注力するため、現状では考えていないとのこと。
<メルカリならではポイント(考察含む)>
①売上金がすぐに少額でも使える(メルカリでの)
②多くの加盟店で使える(出口の多さ)
③メルカリのアプリでそのまま使える(新たにアプリDLが不要)
- また、取得データ自体も、既存の商品開発の枠組みを超えたもので「二次流通を前提とした商品開発」に使えるデータが取得可能と捉えられ、これから進んでいくシェアリングエコノミー/サブスクリプション型のサービス設計においては必須のPFになり得ると考えられます。