Biz-Dev探検記(たまに息抜き)

主に情報通信/サービスPF界隈のお話を。たまに旅行とかアニメも。

【事業戦略】KDDIの金融PF構想

 KDDIが金融領域で攻めに転じました。

 これまでライフデザイン事業としてスマホを入り口とするサービスの拡充に力を入れてきたところ、2/12のリリースで以下を発表しました。

 ・「カブドットコム証券への支配権強化」

 ・「じぶん銀行の連結化」による足腰基盤の強化

 ・「auフィナンシャルHD設立」によるガバナンス体制の整備

 メディアやアナリストレポートにも出ていますが、スマホを起点とする金融事業強化に資源投下を進めるものと推察されます。

 (後は、外からはバラバラしているエンタメや別領域に対しても「金融を付加価値」として強化を進めるものと。)

 

【今回施策の概要】

 今回のKDDIの施策としては大きく3点です。

 https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2019/02/12/3593.html

 

<1;金融持株会社auフィナンシャルHD」の設立>

・これまでバラバラの資本関係であった金融子会社の資本関係整理/ガバナンス強化/意思決定の迅速化を進めるための施策

 (加えて本業とのシナジーを追求する)

・具体的には本体で進める「スマートマネー構想*」の推進役の立ち位置に。

 (*スマホを入り口とする金融サービスのワンストップサービス提供)

 ┗auウォレットをハブとして、スポークに各金融サービスがある構想なのだと思います。

・あとは社名変更するそうです。「au-」シリーズでの展開を行うとのこと。へえ、ちょっと長い…

 

<2;じぶん銀行連結子会社化>

じぶん銀行の第三者割当増資を引き受け、連結子会社化を実施。

 ┗出資比率を現状の50%から63.78%へ拡大。

・なんだかんだで銀行はすべての金融機能の基盤機能。連結化による金融機能基盤強化に繋げるものと。

 →今後の決済基盤提供等のベースにしつつ、データの獲得

 

<3;カブドットコム証券の関係会社化>

カブドットコム証券の株式TOBを実施

 ┗49.0%株式の取得を目指す(買付額は876億円)

・証券はKDDIが揃える金融シリーズから抜けており、資産運用のラインナップ拡大を狙うものとみられます

 (加えて、KDDI-AMとの連携/じぶん銀行との連携強化も)

 

 

 

 

【考察】

・やはり狙いは「スマホ金融」で、スマホを入口とする金融サービスのワンストップ提供を行いたいのだと思われます。

 ┗その基盤の上でデータ利活用やUI改善/UCX提供を行うことで通信の伸び鈍化をカバーして新しい柱へ

 ┗さらに、そこからEコマース/娯楽/教育といった分野への消費を促進して、「au経済圏」拡大を

・その背景ははやり「通信業態への風当たりの強さ」があるものとみられます。

 ┗業界に対する「政からの圧力」

 ┗抑々格安スマホの比率が上昇している中での、楽天の新規参入という業界構造の変化

 *加えて、KDDI顧客の流動性は他社に比べて比較的高い点も。

・結局のところ、通信キャリアの強みは「通信費の捕捉&インセンティブ(固定費であり、自然にポイント(インセンティブ)がたまる仕組みがすでに構築されている)」にあり、LINEなどと異なり、スムーズなフローがある点だと思われます。

 └4000万人のアクティブな顧客基盤に対して、リーチできる点も

・加えて、集められる情報の深みが増すこともあるんだと思います。

 └ライフステージに合わせた金融サービス提案+解約の防止にも援用可能n

【BCx事業戦略】楽天のBC活用

 楽天のBlockchain(BC)の活用状況について、先日行われたカンファレンスでの講演をもとにまとめ&考察をしました。
 楽天は現在エンタープライズ向けのBC-Platform(PF)を提供。特徴としてはBC技術の詳細が分からずとも機能を利用できることで、中小の事業者(顧客)を確り見て事業展開している印象を得ました。

<PFの構成要素>
 楽天BCPFの構成要素/詳細は下記の3つで、基本的に楽天に出店する中小事業者に対するサービス展開を行っているものとみられます。
 楽天は2016年にBC研究所(英)を開設して研究を進めてきましたが、「Why BC??」の議論は常にあり、必要性が理解されない状況は変わらないとのことです。ただ、目的の明確化(ユースケースの特定)を通じて開発も進み、実装も進んだとのこと。

(1) エンタープライズ向けBC-PF
 企業/法人を対象とするBC-PF環境(Hyperledger Fablicメイン)を提供。セキュリティの高さ/可用性/クラウドベースでの開発を行える環境を提供
(2) 仮想通貨サービス
 第三者の取引所が提供するサービスと繋ぐ、BC-PFを通じて簡単に仮想通貨売買/取引を行うことのできるサービスを提供
(3) キーカストディサービス
 暗号化キーのセキュア管理を実現するための機能をBC-PFを通して提供。顧客はPFを介したサービス開発/構築により暗号化キーをセキュアに管理できる

<楽天PFへのBC適用>
楽天は16年に開設したBC-Labで既存サービスへの利活用を模索、4つのユースケースですでに実装を行ったとのこと。特に、楽天ポイントとBCを組み合わせた独自の仮想通貨「楽天コイン」の発行構想は非常に興味深いものでした。

(1) 楽天エナジートレーディングシステム(Rets)
 Retsは楽天エナジーが提供するPF上で稼働するCO2排出権のトレーディングシステム。BCでCO2排出権管理を行うことでシステム構築をしている。
(2) R-Star
 現在、社内でPoCを行っている評価のトークン化PJ。このサービスで例えば、同僚に仕事を助けてもらったときに、メッセージとコインを送ることが可能となる。
(3) ポイントサービスxブロックチェーン
 楽天の持つスーパーポイントをコアとする経済圏を構築。ポイントサービスとBC技術を組み合わせた新サービス/仕組みの開発が進行中。社内でいくつかのPoCを行っているとのこと。
(4) 楽天傘下「みんなのビットコイン
 昨年8月に買収した「みんなのビットコイン」を通じ、本年4月からサービス開始を予定。具体的には、ホットウォレットでのサービス提供を検討、サービス機能は楽天PFを利用した開発が進行中。
 単純な取引所サービスでなく、他サービス連携を進めて利用者にさらなる高い顧客体験を提供。

<考察>
 楽天の今回の発表に関しては「着実にBCの事業実装」を進め、「仮想通貨のサービス化」も進めていることが大きいと感じます。
 前者に関しては既に抱えている事業/技術知見(AIやデータ解析など)とBCを組み合わせることでサービスのUI/UX向上につなげようとしている点は顧客(クライアント/カスタマ双方)をしっかり見ている印象を受けました。
 後者の仮想通貨はポイント事業や金融事業を展開する中で見えた日本の特性をBC活用することでUI/UX改善につなげていこうという意志が見て取れます。おそらく、「新しいデジタルアセットとしての仮想通貨」という認識を広め、決済手段の一つとして活用を行って経済圏の強化につなげていくものとみられます。

【Blockchain】ETHのハードフォーク(コンスタンティノープル)について

ちょっとマニアックですが、1/16にブロックチェーンNWの一つであるイーサリアムでハードフォークが行われるのでまとめてみました。コンスタンティノープルと名付けられた今回のハードフォーク、今後の環境としては、開発しやすくなる方向性なのかもしれません。

<サマリ>
・今回のアプデは「コンスティノープル」と名付けられており、イーサリアム2.0完成に向けての準備の位置づけ。
・内容は「本丸;PoS導入に向けた準備プロセス=移行プロセスをスムーズにする調整」となります。
 ┗マイニング報酬引き下げ/生成何位の調整/アーキテクチャの改善など
 ┗今回のハードフォークは全員合意の下で行われ、以前のBTCやETHのハードフォークと一線を画しています。

<イーサリアム2.0とは>
完全体へ向けた一里塚であるイーサリアム2.0では、大きく2つの重要な変更がなされる想定。

[1;コンセンサスアルゴリズムがPoSへ]
トランザクションの格納ブロック生成者を決めるルールが、PoSへ移行
・現在採用しているPoWでは特定条件を満たす数値の計算競争であるマイニングを要し、比較的安全性の高いアルゴリズムとして実証されています。
 →一方で、相場急騰に伴う過度なマイニング競争の発生や、増加するNWの規模に対応できないスケーラビリティ問題、電力消費量などが問題視されています。
・採用予定のPoSは自身の資産(保有通貨)を担保(Staking)としてブロック生成者となる機会を得ることが出来ます。
 ┗ブロックに不正記録が存在した場合には担保没収、マイニングを行わずに信用度の高いブロック生成者選出ができると考えられています。

[2;シャーディングの導入]
・スケーラビリティの改善に向けた技術の導入
・現在ノードになるためにはBCNWをほぼすべてDLせねばならずいわゆるスケーラビリティ問題が存在しています。
 ┗セキュリティ観点では長所ですが、個々のマシンのストレージを圧迫。
 →将来的に一部のスパコンでしか処理できない事態になることが懸念されています。
・導入準備を進めるシャーディングでは、ノードの大きさに応じてBCを断片的に保存/管理できるようにし、より多くのマシンがNW維持に参加できるようにする技術です。

<今回のコンスタンティノープル>
イーサリアム1.0→2.0への4段階のうちの3.5段階目の位置付けで、当初想定ロードマップよりもディレイしている状況
 (諸々の外部環境の変化によるDelayとのこと)
コンスタンティノープルでのアプデは下記の5件を実施、PoS導入へ備える。
 [1: EIP145:ビット演算変換機能の追加]
  ┗Ethereum仮想マシン(EVM)にビットシフト命令を実装、スマートコントラクトにかかるGAS代を低減
 [2: EIP1014:初期化の済んでいないアドレスとのやり取りを可能に]
  ┗State Channelのパフォーマンスを改善する、新しいトランザクション作成命令の追加
 [3: EIP1052:特定のアドレスハッシュを生成するオペコードの追加]
  ┗スマートコントラクトの検証コストを削減する、新規命令の追加
 [4: EIP1234:「ディフィカルティボム」の延長、マイニング報酬の減少化]
  ┗ブロック生成の難易度上昇率の緩和とブロック生成報酬の2ETHへの引き下げ
 [5: EIP1283:ガス計量法の変更]
  ┗1つのトランザクションで複数のストレージを扱うようなスマートコントラクトのGAS代を節約する

・今回のアプデの中で最重要なのは「EIP1234; ”ディフィカルティボム”の条件緩和」だと考えられます。
 (マイニング難易度の上昇速度を遅くし、かつブロック生成報酬を3ETH→2ETHに減少)
 ┗「ディフィカルティボム」はマイニング難易度を徐々に高めて、収益性を低下/マイニング撤退促進をするプログラム
 →現段階のボムは難易度の上昇速度が速すぎ、マイニング収益性が低くなりすぎてPoS導入前にNW処理能力が大きく低下する懸念がありました

 

【雑感】GMOのマイニング撤退に思う、BCの脆弱性

ご存知の向きが多いと思いますが、仮想通貨の市況悪化に伴いましてマイニング事業者の撤退/廃業がグローバルに拡大しています。近々ではGMOが特損出して「マイニング装置の製販事業」から撤退されるとのこと…

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120181225454270.pdf

(*自社マイニングは継続するそうですよ)


筋道だって考えると、「市況悪化→業者の淘汰→ハッシュレート/採掘速度の下落三→ブロック生成時間の増加→採掘難度ダウン三→収益均衡」となるのだと思いますが、今回はこのサイクル循環を上回る市況悪化スピードであったことからですスパイラルを生んだのかなと。
その辺、Speculativeな対象になっていることは否めないんだなあと実感しております。
事業開発の目線からいうと市況の悪化はパブリックBCのブロック生成手数料低下につながるので良いかなと思う反面、そもそもマイナーが死んでしまっては元も子もないという難しいところ…何事もバランスって大事ですな。
いろいろなチェーンが存在していますが、突き詰めるとマイニング報酬という経済インセンティブを根幹としてシステム運営継続性を保つという、脆弱性と隣り合わせなんだなあと実感する事案なのでありました。

【考察】チケット転売防止法と商機

12/4にチケットの転売を規制する法案が衆院で可決、参議院付後、12月中にも成立する見込みとなりました。2020年の東京五輪を念頭に置いているとのことですが、ビジネスチャンスにもなりそうな、この動き。ちょっとまとめてみました。

端的には、本法案は事業者(興行主や販売代理者)に対して、チケット転売抑制策の実行を義務付けるもののため、耐改竄性という観点からブロックチェーンの利活用は議論に上がり、事業者(興行主/販売委託業者)にとっても管理するDB/仕組みは必須となると考えられます。

<サマリと商機>
(サマリ)
・チケット販売規制法はこれまでザルだった部分への対策を事業者に義務付け
 (手を付けないと見せしめ的に立件される可能性もあり)
・対策については個別/連携か分からないですが進めるべき事象で、各社が動く可能性高い
(商機)
・「業」として行うならば個人も事業者も規制対象で、それを見過ごすPFeRもほう助犯となる可能性
 →これを避けるための仕組み構築は急務で、BC活用余地あり

-概要と諸々まとめ-
<制定背景>
・従来の転売行為は都道府県の迷惑防止条例で取締を実施してきたが、「Webは対象外」「未制定の自治体もあり」といった抜け道が多かった
・2020年五輪を前にしてIOCからの要請もあり、ダフ屋行為を正面から全国一律で規制する新規立法が必要となってきた

<法案概要>
(規制対象のチケット)
・規制の対象となるチケットは「興行」
 └不特定多数が視聴する芸術/芸能/スポーツに限定
 └従来型の紙製チケットだけでなく、QRコードのようなデジタルチケットも対象
 ※興行チケットに当たらないものは対象外(乗車券/指定券/整理券など)

・また、興行チケットの条件としては下記。
 (1) 興行主/委託販売業者が販売時に
  (i)同意のない有償譲渡を禁止し
  (ii)入場資格者又は購入者の氏名・連絡先を確認した上で
  (i)(ii)が券面などに表示されているもの
 (2) 興行の日時/場所のほか、入場資格者/座席指定のもの
 ※無料チケット/転売OKチケット、販売時に本人確認を実施しないチケットなどは対象外

(規制対象の行為)
・規制の対象となる行為は、次の2つ。
 (a)業として、興行主/委託販売業者の事前同意を得ずに、販売価格以上で有償譲渡すること(不正転売)
 (b)(a)の目的で、譲り受けること(不正仕入

・これらの行為に及ぶと、1年以下の懲役か100万円以下の罰金となる。
・解釈によるが厳しく解釈すると…
 └事務手数料/譲渡代など上乗名目は関係なく、興行主が設定した価格を超過すると違法
 └現金に限らず、転売金額に相当するプリペイドカードやギフト券、物品等との交換も違法
・また、(a)の「業として」は「反復継続の意思をもって」を意味する
 └過去に同様の行為を繰り返しておらず、転売価格も送料など実費分を追加している程度であれば、「業として」には当たらない

(転売サイトの取扱い)
・上記チケットの不正転売が違法となるため、チケットの不正転売を知りながら放置し、ビジネスとしていれば幇助犯として検挙対象に。
 └チケキャン事件のように、チケットの高額転売は違法である点を認知させるため、一罰百戒を目的に「捜査に非協力」で「高額転売対策未整備」な転売サイトを狙い撃ちする可能性も。
 (チケキャン…最終的には起訴猶予だが、社会からバッシングを受けてサービス終了)

【実効のある対策とは】
・法案では、興行主側にチケットの適正流通/不正転売防止を図る努力義務が課され、国/自治体にもサポート義務が課されている。
・一方で不正転売を不可能とするために、下記仕組みを内包する施策が必要と考えられる。

(A) デジタルチケット化と本人確認の徹底
・転売禁止のデジタルチケットに統一、表示されるID/PWをスマートフォンと紐付けして、購入時に登録情報を入場時に求める
 (クレカ情報/顔写真付きID/スマートフォンの提示など) 
・購入可能枚数を制限したり、販売時にあらかじめ同行者の氏名や連絡先を登録
・大規模なコンサートでも、何人に1人といった割合でアトランダムに本人確認を行う

(B)興行主によるリセールサイトの設営
・興行主側が公式のリセールサイトを運営、手数料をより低額とした上で定価以下でのチケットのリセールを安全かつ容易に行えるよう整備

(C)不正転売チケットの無効化と購入者のブラックリスト入り
・非公式転売サイトで販売されるチケット無効化/当該チケット利用者の入場拒否&ブラックリスト入りさせる措置をとることで牽制とする

(D)チケット販売価格の多様化や柔軟化
・そもそも座席の属性が異なるのに、価格に大差がないために転売が成り立っている。
 →価格を市場原理に委ねることで価格付け行為自体を需給マッチングに任せるという選択肢も有力。

(※)ファンによるガーディアンも
・興行主やアライアンスがWeb(BC)上に通報窓口を作り不正転売チケットの状況(非公式サイトで不正転売されているチケットの発見者からその座席番号や出品時のスクリーンショットなどの情報を得)を把握
・報酬としてトークンやファンクラブ得点を用いることでインセンティブとすることも可能だし、そもそもファンならば無償でも動く可能性が高い

【BCx事業戦略】メルカリによるMercariX構想

 最近しっかりウォッチできていなかったのですが、メルカリはやはりやることがでかい…所感含めてまとめてみました。

 10/5に開催されたMercari Tech Conf 2018でメルカリがBlockchain(以下、BC)を用いて新たな価値交換システムの構築を目指していることが発表されました。

 その構想はMercariX。BCをベースとした次のコンセプトモデルで、リスティング機能/エスクロー機能を備え、中央管理機関を介さないP2P取引を可能とするサービス基盤について社内PoCを行っているとのことです。そこでは暗号通貨;メルコインが使われているとのこと。BC技術のオンパレードなサービスの実証が行われています。

 

■基本情報■

<メルペイとは>

 2017年にメルカリの金融子会社として設立され、単なる決済機能会社でなくシェアリングなどの様な取引データから生まれる「価値交換と信用」によるスコア化信用創造会社」と位置付けている。

 「信用を創造して、なめらかな社会を創る」をミッションとしており、利用者をエンパワメントするために必要な信用を想像し、究極的には「信用の流動性」を高めて取引できるメルカリ(「お金がなくても使えるようなメルカリ」…現在は種銭がないと信用も創れない)を目指す。

 信用のベースとなるデータは本業のフリマアプリで得た膨大な個人間の取引データに加え、同社子会社のソウゾウによるシェアサイクル事業「メルチャリ」などの利用データも保有している。個人の信用度を定めるための要素を着実に集めてきた。

 

<Mercari X>

(概要)

BCの可能性の検証のため、「MercariX」というアプリ(独自のBCと暗号化通貨(仮想通貨)を使った新たなサービス)を社内PoC中で、社員が独自通貨「メルコイン」を使用して物品売買をP2Pで行っている。

大きく2つの機能を有しており、下記2つの組合せでBCの特徴を生かしたDAppsの開発を行う。

  • 1;需給マッチング =現Mercariと同様に買い手/売り手の取引基盤アプリ
  • 2;仲介機能 =エスクロー機能を備えた仲介機能提供アプリ

(具体的には…)

1;需給マッチング

  • 一番の特徴はユーザー同士でチャット型のコミュニケーションを取れること。
  • BCという新技術導入に伴うユーザーの利便性低下を、参加者同士がチャットを用いて円滑なサービス利用できるようにする

2;仲介機能

  • P2P取引(個人間取引)及びBC利用の肝となる機能。
  • 普段メルカリが担当している監視などの仲介を個人が行うというもので、基本的には上述したチャット/メッセージ機能を利用し仲介を進める

 

■ビジネスモデルと変化■

<現状のビジネスモデル>

マーケットプレイス+仲介(エスクロー)する仲介業の役割の二つで構成されている。

【1】マーケットプレイス

  1. 売り手が商品を出品
  2. 欲しい買い手が購入
  3. 買い手は購入代金をメルカリに預託
  4. 売り手は運送業者に対象物品を渡して、申請
  5. 買い手の元に商品が届き、レビューが完了
  6. 売り手に代金が支払われる。

【2】エスクロー

  • 取引が公正に完了するかの監視を行う機能となります。仲介に関して現在メルカリは全責任を負い、それと引き換えに10%の手数料を受け取るという形を取っています。
  • 責任範囲は下記を含む取引に係る全行為に及んでいます
    • 買い手は料金を支払ったか
    • 商品を確実に受け取れたか
    • 運送業者が正しく届けたか
    • レビューは正当なものとなっているか など
  • 価値交換という行為においてエスクロー機能は肝。「欲求の二重の一致」にあたってもエスクロー機能をどのように機能させるかは重要。

 

<MercariXのビジネスモデル>

BCにより、マーケットプレイス/仲介機能がPF提供型からP2P型に置換、インセンティブ及び経済圏構築によるマネタイズ/ビジネス拡張に舵を切ることになりますが、最大の特徴は「インセンティブ」。

現在メルカリで提供している「不正監視等の取引仲介機能」が個人も担えるようになるため、インセンティブの設計によってサービスの品質が左右される虞があります。

 

  1. 売り手が商品を出品
  2. 買い手はMercariXのマーケットアプリで商品閲覧し、マッチング
  3. 買い手/売り手の両者は「仲介をする個人のエスクロー」に仲介料を払う
  4. 運送確認もBC活用して商品の発送/到着を確認
  5. 売り手/買い手/仲介者が相互にレビュー

 

  • MercariXでは全てが「メルコイン」によってメルカリを通さず直接送金/取引が実行される点が最大の特徴。
  • 肝心のマネタイズは「仲介機能(Mercariがしても問題ない)」「仲介機能利用手数料(仲介者からの手数料)」がメインになってこようと思われますが、既存のMercariも終了するわけではなく、そちらからの収益が大宗を占めるものとみられます。

 

■MerariXの課題■

<トランザクション量>

<セキュリティ>

  • 課題;鍵管理や、トークンを使った不正トランザクションをいかに検知するか
  • 解決;秘密鍵やサイン方法といった機能面での研究、検知枠組みの研究、コンセンサス研究

<インセンティブ設計>

  • 問題;当該システム(インセンティブ設計)はP2P間での信頼担保/取引仲介/サービス展開に耐えうるか。また、利用者が使いたくなる設計なのか
  • 解決;公平/使いたくなる設計(ゲーム理論的アプローチ)/トークンエコノミーに向けたサイドチェーンの利用/ステーブルコインなどの利用検討

 

■BCの活用余地■

  • メルカリ/メルペイが目指す世界観の中でBCが用いられる利点としては「1;改ざん困難性」「2;対検閲性」「3;非中央集権」の3つとみられ、これらBCの効用はPF事業者に対して大きく2つの変化「A;プラットフォーム環境の変化」「B;信用の形の変化」をもたらすと考えられます。

 

<A:プラットフォーム環境の変化>

  • 現状の各種PF事業者の特徴はネットワーク効果にあり、「中央集権下に人が集まる→1つのPFに力が一極集中」という流れで経済圏を構築してきました。具体的には下記の流れが一般的でした。
  1. 一つの巨大PFサービスを運営する企業に多くの人が集中
  2. 当該PFに多くの情報が集まって利便性が向上
  3. 利便性向上により、更に人が集まる
  4. 更に利便性が向上する
  • しかし、BC技術導入により、このような中央集権型PFの管理形態は退場を余儀なくされ、個人間取引がより盛んになるプラットフォームが生まれてくると考えられます。

 

<B;信用の形の変化>

(概要)

  • これまで、メルカリのような経済行為を仲介するサービスは、運営会社への信用(第三者機関の存在によって担保された信用)で成立していましたが、BC技術には上記の通り「1;改ざん困難性」「2;対検閲性」という特徴により、そもそも第三者機関を信頼する必要がなくなります
    • BC上の取引内容の改ざんが困難
    • NWの参加制限を故意的にすることが困難
  • 上記の機能により、第三者機関による信用担保が不要となるため、個人間取引でも信頼を必要とせずにBC上で行うことが可能になると思われます

(信用情報)

  • 究極、信用担保は「データ」/「データを可視化したスコア」によって為されるものとみられ、メルペイでは信用創造と信用スコアリングに注力するとみられます。
  • 信用データはこれまでのMercariでの取引データや、他少額サービスの利用履歴などからスコアリングされ、徐々にデータリッチ化して取引基盤データになっていくものと考えられます。

 

■BCへのMercariの取組■

  • メルカリは下記3点において研究開発を進めており、基礎/応用にバランスを置いた進め方をしています。
    • 「1:BCコア技術」 基礎リサーチ/周辺リサーチ(暗号技術や合意アルゴリズムなど)
    • 「2;セキュリティ」 仮想通貨ごと/秘密鍵や不正トランザクション対処/攻撃手法など
    • 「3:BCの応用」 基礎研究のビジネス化

【BCx事業戦略】GMOによる円ペッグ仮想通貨発行

GMOインターネットが円ペッグ型の仮想通貨の発行をリリースしました。色々と議論はあると思いますが、個人的には国内法に照らすと「電子マネー」なんだろうなと思います。
ミソは国外での流通に絞ることで仮想通貨として流通させ、第二のRippleを目指した決済通貨としての確立を目指すとみられます
(二番煎じとか言ってないですよ…出がらしかもしれないけど)
https://www.gmo.jp/news/article/6177/

<発行形態>
GJYは法定通貨である日本円とペッグさせるステーブルコインとして発行。
発行通貨相当の日本円をGMOインターネット保有し、交換価値を保証する形態としています。

<発足背景>
GMOグループは仮想通貨事業の中で、マイニング/交換業/決済の3事業の実行を掲げています。
現在、マイニング/交換業は参入済みですが決済事業は手付かずでした。
今回の仮想通貨発行により決済事業に参入とする方針。

<所感と想像>
■ペッグとした背景
・完全に越境決済分野(本邦外)を狙いに来ていると思われます。Rippleやテザーの成功を見て、一定シェアが取れると判断したものと。

■日本以外を対象としている背景
・交換業審査が停止していることに加えて、待つよりも海外で実績積んだほうがいざというときに、審査を優位/優先的に進められるという目論見があるとみられます。

■背景とする日本円の担保
GMOが傘下に抱える決済会社(GMOペイメント)/銀行(あおぞらとのネットBK)が保有する日本円を担保に発行するというのがオーソドックスな解釈と思われます。
 →銀行のほうは預金保険法の兼ね合いがあるので何らかの規制が入りそうですが決済で抱える保証金等を裏付けに発行するのはありだと思われます。
・日本円を裏付けに海外で流通する仮想通貨を発行…なかなかに面白そうですし、テザーのような信用不安も起こさなそうです。
■流通対象はどこか??
・海外送金の際にステーブルコインを使うことで価格変動のリスクを抑える形で利用できる想定。
通貨危機発生国での国内通貨代替/先進国でのキャッシュレス決済通貨としてポテンシャルを持つものとみられます