Biz-Dev探検記(たまに息抜き)

主に情報通信/サービスPF界隈のお話を。たまに旅行とかアニメも。

【考察】チケット転売防止法と商機

12/4にチケットの転売を規制する法案が衆院で可決、参議院付後、12月中にも成立する見込みとなりました。2020年の東京五輪を念頭に置いているとのことですが、ビジネスチャンスにもなりそうな、この動き。ちょっとまとめてみました。

端的には、本法案は事業者(興行主や販売代理者)に対して、チケット転売抑制策の実行を義務付けるもののため、耐改竄性という観点からブロックチェーンの利活用は議論に上がり、事業者(興行主/販売委託業者)にとっても管理するDB/仕組みは必須となると考えられます。

<サマリと商機>
(サマリ)
・チケット販売規制法はこれまでザルだった部分への対策を事業者に義務付け
 (手を付けないと見せしめ的に立件される可能性もあり)
・対策については個別/連携か分からないですが進めるべき事象で、各社が動く可能性高い
(商機)
・「業」として行うならば個人も事業者も規制対象で、それを見過ごすPFeRもほう助犯となる可能性
 →これを避けるための仕組み構築は急務で、BC活用余地あり

-概要と諸々まとめ-
<制定背景>
・従来の転売行為は都道府県の迷惑防止条例で取締を実施してきたが、「Webは対象外」「未制定の自治体もあり」といった抜け道が多かった
・2020年五輪を前にしてIOCからの要請もあり、ダフ屋行為を正面から全国一律で規制する新規立法が必要となってきた

<法案概要>
(規制対象のチケット)
・規制の対象となるチケットは「興行」
 └不特定多数が視聴する芸術/芸能/スポーツに限定
 └従来型の紙製チケットだけでなく、QRコードのようなデジタルチケットも対象
 ※興行チケットに当たらないものは対象外(乗車券/指定券/整理券など)

・また、興行チケットの条件としては下記。
 (1) 興行主/委託販売業者が販売時に
  (i)同意のない有償譲渡を禁止し
  (ii)入場資格者又は購入者の氏名・連絡先を確認した上で
  (i)(ii)が券面などに表示されているもの
 (2) 興行の日時/場所のほか、入場資格者/座席指定のもの
 ※無料チケット/転売OKチケット、販売時に本人確認を実施しないチケットなどは対象外

(規制対象の行為)
・規制の対象となる行為は、次の2つ。
 (a)業として、興行主/委託販売業者の事前同意を得ずに、販売価格以上で有償譲渡すること(不正転売)
 (b)(a)の目的で、譲り受けること(不正仕入

・これらの行為に及ぶと、1年以下の懲役か100万円以下の罰金となる。
・解釈によるが厳しく解釈すると…
 └事務手数料/譲渡代など上乗名目は関係なく、興行主が設定した価格を超過すると違法
 └現金に限らず、転売金額に相当するプリペイドカードやギフト券、物品等との交換も違法
・また、(a)の「業として」は「反復継続の意思をもって」を意味する
 └過去に同様の行為を繰り返しておらず、転売価格も送料など実費分を追加している程度であれば、「業として」には当たらない

(転売サイトの取扱い)
・上記チケットの不正転売が違法となるため、チケットの不正転売を知りながら放置し、ビジネスとしていれば幇助犯として検挙対象に。
 └チケキャン事件のように、チケットの高額転売は違法である点を認知させるため、一罰百戒を目的に「捜査に非協力」で「高額転売対策未整備」な転売サイトを狙い撃ちする可能性も。
 (チケキャン…最終的には起訴猶予だが、社会からバッシングを受けてサービス終了)

【実効のある対策とは】
・法案では、興行主側にチケットの適正流通/不正転売防止を図る努力義務が課され、国/自治体にもサポート義務が課されている。
・一方で不正転売を不可能とするために、下記仕組みを内包する施策が必要と考えられる。

(A) デジタルチケット化と本人確認の徹底
・転売禁止のデジタルチケットに統一、表示されるID/PWをスマートフォンと紐付けして、購入時に登録情報を入場時に求める
 (クレカ情報/顔写真付きID/スマートフォンの提示など) 
・購入可能枚数を制限したり、販売時にあらかじめ同行者の氏名や連絡先を登録
・大規模なコンサートでも、何人に1人といった割合でアトランダムに本人確認を行う

(B)興行主によるリセールサイトの設営
・興行主側が公式のリセールサイトを運営、手数料をより低額とした上で定価以下でのチケットのリセールを安全かつ容易に行えるよう整備

(C)不正転売チケットの無効化と購入者のブラックリスト入り
・非公式転売サイトで販売されるチケット無効化/当該チケット利用者の入場拒否&ブラックリスト入りさせる措置をとることで牽制とする

(D)チケット販売価格の多様化や柔軟化
・そもそも座席の属性が異なるのに、価格に大差がないために転売が成り立っている。
 →価格を市場原理に委ねることで価格付け行為自体を需給マッチングに任せるという選択肢も有力。

(※)ファンによるガーディアンも
・興行主やアライアンスがWeb(BC)上に通報窓口を作り不正転売チケットの状況(非公式サイトで不正転売されているチケットの発見者からその座席番号や出品時のスクリーンショットなどの情報を得)を把握
・報酬としてトークンやファンクラブ得点を用いることでインセンティブとすることも可能だし、そもそもファンならば無償でも動く可能性が高い